製造業DXの技術スタックは「AI・クラウド・データ基盤」の組み合わせが主流に:4,506件の事例分析から見えた現在地

製造業DXの技術スタックは「AI・クラウド・データ基盤」の組み合わせが主流に:4,506件の事例分析から見えた現在地

分析から見えた製造業DXの3つの主要トレンド

今回の分析では、製造業DXにおいて以下の3つの傾向が明確になりました。

  1. 「AI・クラウド・データ基盤」の組み合わせが中心: 公開事例では、AI(人工知能)、生成AI、クラウド、データ基盤に関連するツールの登場頻度が非常に高く、これらを組み合わせた取り組みがDXの中心となっています。収集したデータをAIで分析し、クラウド上で活用することで、業務判断や現場改善へと繋げる段階に進んでいます。
  2. デジタルツインとシミュレーションの拡大: NVIDIA Omniverse、Siemens Xcelerator、3DEXPERIENCE、Ansysといったプラットフォームの登場頻度から、デジタルツイン(現実世界の物理的なシステムやプロセスを仮想空間に再現する技術)やシミュレーションが、設計・製造・ロボット開発領域で重要なテーマとして拡大していることが伺えます。
  3. 既存システムと生成AI・BI・市民開発ツールの接続が重要に: 基幹システム(ERP: Enterprise Resource Planningなど)や現場システムに蓄積されたデータを、現場担当者や経営層が使いやすい形で活用するためには、BI(Business Intelligence: データの可視化や分析を行うツール)、生成AI、業務アプリケーション、市民開発ツール(専門的なプログラミング知識がなくてもアプリケーションを開発できるツール)との連携が不可欠です。

公開事例に多く登場する主要ツール・プラットフォーム

製造業DX事例4,506件の分析により、特に登場頻度の高かったツール・プラットフォームは以下の通りです。

ツール・プラットフォーム名 登場件数 主な関連領域
NVIDIA関連技術 / GPU / CUDA 205件 AI基盤、画像認識、シミュレーション、ロボット、エッジAI
Microsoft Azure / Azure OpenAI 180件 クラウド、生成AI、データ基盤、AIエージェント、業務アプリ
ChatGPT / OpenAI 164件 生成AI、社内文書検索、業務効率化、ナレッジ活用
NVIDIA Omniverse 119件 デジタルツイン、仮想工場、シミュレーション、ロボット開発
AWS 87件 クラウド、IoT、データ基盤、AI、製造業向けクラウド活用
Microsoft Copilot 79件 生成AI、業務効率化、全社ナレッジ活用、Office業務支援
Google Cloud 68件 クラウド、AI、データ分析、生成AI、翻訳・顧客支援
SAP S/4HANA 61件 ERP、基幹システム刷新、業務標準化、SCM連携
Siemens Xcelerator 40件 産業ソフトウェア、PLM、デジタルツイン、製造業DX基盤
Gemini 34件 生成AI、AIエージェント、業務支援、ナレッジ活用

製造業DXの技術スタックを構成する6つの領域

今回の分析から、製造業DXで活用されるツール・プラットフォームは、大きく6つの領域に分類できることが分かりました。

製造業DXの技術スタック

領域 主なツール・プラットフォーム例 主な用途
AI・生成AI基盤 OpenAI、ChatGPT、Azure OpenAI、Copilot、Gemini、Claude、Amazon Bedrock 文書検索、問い合わせ対応、業務効率化、AIエージェント
クラウド・データ基盤 Azure、AWS、Google Cloud、Databricks、Snowflake、Cognite Data Fusion データ統合、分析基盤、IoT、クラウド活用
デジタルツイン・シミュレーション NVIDIA Omniverse、Ansys、3DEXPERIENCE、Siemens Xcelerator 仮想工場、設計検証、シミュレーション、ロボット開発
ERP・基幹業務 SAP S/4HANA、Oracle 基幹システム刷新、業務標準化、SCM、経営管理
PLM・設計データ管理 Teamcenter、3DEXPERIENCE、Windchill、Aras BOM、構成管理、設計データ管理、デジタルスレッド
市民開発・BI Power Platform、Power Apps、Power BI、kintone、Tableau 業務アプリ、可視化、紙帳票電子化、現場改善

DX推進担当者がツール選定で考慮すべき視点

この分析結果を踏まえ、製造業がDXの取り組みを検討する際には、以下の観点が重要です。

  • 自社のDXテーマの明確化: AI、クラウド、ERP、PLM(製品ライフサイクル管理)、MES(製造実行システム)、現場改善など、自社が取り組むべきDXのテーマを具体的に特定することが、適切なツール選定の第一歩です。

  • 既存システムとの連携: ツール単体での導入だけでなく、既存のシステムや現場設備との連携性を事前に確認することが重要です。データの一元化やスムーズな情報共有には不可欠な要素となります。

  • データ活用の設計: どこにデータを集め、誰が、どのようにデータを活用するのかを具体的に設計することで、DXの成果を最大化できます。

  • 生成AI利用時の考慮点: 生成AIを導入する際は、社内データの取り扱い、権限管理、セキュリティ対策、RAG(Retrieval-Augmented Generation: 外部情報源を参照して回答を生成する技術)設計などを十分に考慮する必要があります。

  • 市民開発ツールのガバナンス: 市民開発ツールは現場の業務改善に貢献しますが、自由度とITガバナンス(情報システムを適切に管理・運用するための仕組み)の両立を図ることが求められます。

  • 導入後の運用・教育・人材育成: ツールの導入だけでなく、その後の運用体制、従業員への教育、DXを推進できる人材の育成まで含めて検討することで、持続的なDX推進が可能になります。

本レポートに関するお問い合わせ先

今回の分析レポートは、株式会社パブリカが運営する「ものづくり新聞」によるものです。

株式会社パブリカは、製造業向けコンサルティングサービス、ウェブメディア事業(ものづくり新聞)、DX人材育成プログラム(Innovation Maker Academy)などを手掛けています。

本件に関するお問い合わせは、ものづくり新聞 編集部(製造DX担当)までご連絡ください。