電気設備自動設計システム「VOLDAR」が電気設備設計の課題を解決
株式会社関電工と株式会社Arentは、電気設備自動設計システム「VOLDAR(ヴォルダー)」の運用を開始しました。このシステムは、熟練設計者の持つ設計ノウハウを計算ロジックとして実装し、BIM(Building Information Modeling:建物の情報を3Dモデルとして一元管理する手法)上で幹線根拠図の作成から概算算出までを一貫して自動化します。これにより、電気設備設計業務の生産性向上と設計品質の標準化を実現します。

VOLDARが解決する建設業界の課題
建設業界では、担い手不足や技術継承が大きな課題となっており、生産性向上と品質確保の両立が求められています。特に電気設備設計においては、設備容量の算定、幹線計画、各種図面の作成、法令基準の確認といった多岐にわたる業務が、設計者の経験やノウハウに大きく依存していました。このため、品質のばらつきや作業負荷の増大、熟練技術の次世代への継承が困難であるという問題がありました。
VOLDARは、これらの課題に対し、熟練設計者の判断プロセスを形式知化し、計算ロジックとしてシステムに実装することで解決策を提供します。
概算設計業務の大幅な効率化
電気設備工事費の概算業務では、基本設計前の「白図」(機器や配線の記載がない図面)の段階で、積算部署が概算金額を求めます。従来、設計者は経験に基づいて一から幹線根拠図を作成する必要があり、これには2~3週間を要していました。VOLDARを導入することで、この概算根拠図の作成が約1時間に短縮され、概算設計の精度と説明性が向上します。初期段階での金額の精度は、その後の工事予算や受注に直結するため、極めて重要な改善となります。
VOLDARの主な機能と導入メリット
VOLDARは、建築BIMモデルから取得した建物情報と設計条件を活用し、電気設備設計に必要な3D幹線ルート、各種図面、技術計算書の作成を支援します。現在運用されている主な機能は以下の通りです。
幹線設備概算設計支援機能
受注検討の初期段階で、限られた設計情報から根拠に基づく概算コストを算出します。両社が共同開発した幹線ルーティング技術(最適な経路を自動的に探索・決定する技術)を中核に、以下の図面・帳票を自動作成します。
-
幹線設備平面図(配電盤・電灯盤・動力盤の自動配置、幹線ケーブル・ケーブルラックの自動ルーティング)
-
幹線設備系統図
-
単線結線図
-
配電盤表
-
分電盤・動力盤リスト
-
技術計算書(変圧器容量計算、幹線計算、ケーブルラック幅計算など)
電気設備基本設計支援機能
法令上の要件、設計基準、過去の設計ノウハウをロジック化し、各種設備の配置案を自動生成します。設計者が用途・負荷配置条件を設定することで、法令要件や設計ルールを踏まえた機器配置案を自動生成し、設計者の確認・調整を経て設計に反映されます。現在対応している設備は以下の通りです。
-
非常照明設備
-
誘導灯設備
-
コンセント設備
-
放送設備
-
テレビ共聴設備
-
電話設備
-
情報通信(LAN)設備
VOLDARの独自性:熟練ノウハウの数値化とBIM連携
VOLDARは、熟練設計者の判断プロセスを数値化し、幹線ルートの経路の長さ、方向転換の回数、部屋の機能との適合性などを複数のコスト要素として重み付けして自動生成します。生成されたルートは単なる図形データではなく、種別・仕様・接続情報などの属性を持つBIMの設備要素として構築されるため、今後の実施設計・施工フェーズへのデータ受け渡しや、他設備との干渉チェックに活用できます。
また、受変電設備構成と技術計算書を連動して作成し、Excel形式で自動出力できるほか、避難経路を解析して消防法令上の要件を踏まえた誘導灯の配置案を生成する機能も備えています。システムによる自動化と設計者による手動調整の両立が可能であり、効率化と個別プロジェクトに応じた柔軟な設計判断を実現し、ヒューマンエラーの低減にも寄与します。
今後の展望と期待される進化
関電工とArentは、今後2年以内を目途に、一般的な建築物における電気設備基本設計の大部分を自動化することを目指しています。将来的には、AIエージェントによる対話型の設計支援、過去プロジェクトの知見を活用したAIによる設計検証、電気設備施工BIMへのシームレスなデータ連携、積算システムとの自動連携などが検討されています。BIM操作に習熟していない技術者でも容易に利用できるブラウザベースのシステム開発も視野に入れ、設計から施工・積算までをつなぐ電気設備DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや組織を変革すること)基盤への発展を図る計画です。
導入について
VOLDARは、電気設備設計の生産性向上と品質標準化を目指す企業にとって、強力なソリューションとなります。特に大規模な建設プロジェクトを手掛ける建設会社やサブコンにおいて、設計業務の効率化と品質確保に貢献するでしょう。
本システムについてご興味のある方は、以下の連絡先までお問い合わせください。
-
株式会社関電工:kdk-koho@kandenko.co.jp / 050-3186-2920
-
株式会社Arent:info@arent3d.com / 03-6228-3393
開発企業について
株式会社関電工
「人間第一」の理念のもと、電気設備・空調衛生設備・情報通信設備をはじめとする社会インフラの構築と維持を担う総合設備工事会社です。企画・設計から施工、保守・リニューアルまでをワンストップで提供しています。近年はBIM、AI、IoTなどのデジタル技術を活用したDXを推進し、持続可能な社会の実現に貢献しています。
ウェブサイト: https://www.kandenko.co.jp/
株式会社Arent
「暗黙知を民主化する」をミッションに、建設業界を中心としたDXを推進する企業です。クライアント企業とともに業務課題の解決に取り組む「DX事業」と、自社SaaSを展開する「プロダクト事業」の二軸で事業を展開しています。BIMを直感的に扱うためのRevit向けプラグイン「LightningBIM」シリーズをはじめ、建設業界の専門的な知見をソフトウェアとして実装し、業界が抱える構造的課題の解決に取り組んでいます。
ウェブサイト: https://arent.co.jp/
