災害発生時でも約10分で業務再開!600km超の遠隔地でシステム完全自動復旧を実証
近年、激甚災害の増加やサイバー攻撃の高度化により、企業にとって事業継続性の確保が喫緊の課題となっています。特に、重要な社会インフラを担う企業では、災害時にも業務を継続できるミッションクリティカルなシステムが不可欠です。
このような背景のもと、株式会社日立製作所、日立ヴァンタラ株式会社、およびNTTドコモビジネス株式会社の3社は、レッドハット株式会社と日本オラクル株式会社の協力を得て、画期的な共同実証に成功しました。NTTドコモビジネスの低遅延・高速なネットワーク「IOWN® APN」を活用し、600kmを超えるデータセンター間で、アプリケーションを含むシステムの完全自動復旧を世界で初めて確認しました。これにより、データ保全性を維持しつつ、災害発生時でも約10分という短時間で業務を再開できることが実証されました。
「Borderless Data Share (BDS)」が実現する高レベルの事業継続
本実証の中核をなすのは、日立のストレージ仮想化技術とNTTグループのIOWN® APNを組み合わせた長距離データ連携ソリューション「Borderless Data Share (BDS)」です。
解決できる課題
企業の情報システム担当者やDX推進担当者は、以下のような課題に直面しています。
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災害対策の複雑性: 遠隔地間でのリアルタイムデータ同期や、システム全体の自動復旧は、設計や事前検証に高度な専門知識と大きな負担を伴います。
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業務停止時間のリスク: 障害発生時のシステム復旧目標時間(RTO:Recovery Time Objective ※1)やデータ復旧目標地点(RPO:Recovery Point Objective ※2)の要件を満たすことが困難です。
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ITコストと運用効率: 仮想化基盤の老朽化やコンテナ技術※3への移行が進む中で、アプリケーションを含めたシステム全体を柔軟かつ効率的に運用できる環境への需要が高まっています。
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サイバー攻撃への備え: 高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対し、データの保全性を確保し、迅速に復旧できるレジリエンスが求められています。
BDSは、これらの課題に対し、ストレージ仮想化技術とIOWN® APNの組み合わせにより、データ保全性を維持しながら、アプリケーション層まで一気通貫で自動復旧する仕組みを提供します。これにより、障害発生時の業務停止時間を最小限に抑え、事業継続性の向上に大きく貢献します。
システム構成と技術のポイント
本実証では、ミッションクリティカルなシステムの要件を満たすため、以下の技術を組み合わせて実機環境を構築しました。
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ネットワーク: NTTドコモビジネスが提供するIOWN® APN実環境(東京・大阪間相当の600km通信環境)
- IOWN® APNとは: NTTが提唱する次世代通信基盤IOWNの一部で、光通信技術により超高速・低遅延を実現するネットワークです。
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ストレージ: 日立ヴァンタラの「Hitachi Virtual Storage Platform One Block」(VSP One Block)
- ストレージ仮想化技術: 複数のストレージを一つの大きな仮想ストレージとして扱い、管理を容易にする技術です。
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仮想化プラットフォーム: レッドハットの「Red Hat OpenShift Virtualization」
- Red Hat OpenShift Virtualizationとは: Kubernetesを基盤としたプラットフォーム上で、仮想マシンとコンテナを統合管理できる技術です。
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アプリケーション: 日本オラクルの「Oracle AI Database」
この構成により、主サイトで障害が発生した際に、Red Hat OpenShiftの高可用化機能※4からの要求を受け、日立ヴァンタラの「Hitachi Storage Plug-in for Containers」が即座に連動。障害検知から副サイトへの切り替え、OSやデータベースの起動までを自動化し、業務再開までの全プロセスをシームレスに実現しました。

災害発生時に完全自動復旧するアプリケーションを含めた統合環境の実証構成イメージ
実証成果:災害時でも「データ保全性」と「迅速な業務再開」を両立
本実証では、主サイトのシステム停止を想定した副サイトへの切り替えにおいて、以下の3点が確認されました。
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アプリケーション層まで一気通貫な全自動復旧により、約10分での業務再開
- 通常、コールドスタンバイ構成※5ではOSやデータベースの起動に時間を要しますが、各プロセスを効率化することで、約10分という早期の業務再開を実現しました。
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600kmを超える距離環境下におけるデータ保全性の維持
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BDSとOracle AI Databaseの連携により、システム切り替え後もデータの一貫性が維持され、主サイト停止時でも副サイトから業務を継続できることが実証されました。
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600km超の遠隔地間におけるRed Hat OpenShiftのコンテナアプリケーションの実現性を確認
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IOWN® APNの低遅延ネットワークにより、従来困難だった600km超の遠隔地間でも、Red Hat OpenShift上で稼働するマイクロサービス間のリアルタイム連携が可能となり、遠隔地に分散したシステムの一体運用や災害対策への適用可能性が示されました。
これらの成果は、情報システム担当者にとって、災害対策システムの設計・構築にかかる負担を大幅に軽減し、より確実な事業継続計画(BCP)の策定を可能にするものです。
今後の展開と活用シーン
この技術は、金融分野をはじめとする高い信頼性が求められるミッションクリティカルな領域での活用が期待されます。また、単なる災害対策にとどまらず、以下のような多様なシーンでの活用が見込まれています。
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サイバー攻撃対策: BDSのサイバーレジリエンス機能※6とリアルタイムデータ同期を組み合わせることで、サイバー攻撃からの迅速な復旧にも貢献します。
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平常時の最適運用: リアルタイムに同期されたデータを基盤に、電力供給やデータセンターの稼働状況に応じて処理場所を柔軟に切り替える「ワークロードシフト※7」を実現し、「ワットビット連携」構想※8が掲げる持続可能なデジタル社会の実現に貢献します。
日立、日立ヴァンタラ、NTTドコモビジネスの各社は、本実証で得られた知見をBDSの強化につなげ、パートナー企業との連携を深めながら、実用的な災害対策ソリューションとして幅広い顧客への展開を進めていく方針です。日立とNTTドコモビジネスのデータ基盤サービスへの適用も視野に入れています。
導入・問い合わせについて
本ソリューションの具体的な提供形態や料金体系については、今後各社からの発表にご注目ください。ミッションクリティカルなシステムを運用されている企業や、より強固な災害対策を検討されている場合は、ぜひ各社の今後の情報にご期待ください。
本実証の結果は、2026年9月3日(木)~4日(金)に開催される「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」で紹介される予定です。詳細は以下の公式サイトをご確認ください。
※1:RTO(Recovery Time Objective):災害やシステム障害発生時に、システムやサービスの復旧を完了させる目標時間。
※2:RPO(Recovery Point Objective):災害やシステム障害発生時に、失っても許容できるデータの最大量(過去のどの時点までデータを復旧させるかを示す目標値)。
※3:コンテナ技術:アプリケーションとその依存関係を一つのパッケージにまとめ、どの環境でも同じように実行できる軽量な仮想化技術。
※4:高可用化機能:システムの稼働状況を常時監視し、障害発生時に自動で予備のシステムへ処理を切り替えるRed Hat OpenShiftの機能。
※5:コールドスタンバイ構成:災害などの障害に備えた予備のサーバーやシステムを、平常時は稼働させずに停止しておく運用方式。維持コストを抑えられる一方、障害発生時からのシステム立ち上げに時間を要する点が特徴。
※6:サイバーレジリエンス機能:BDSを構成するVSP One Blockに外部からアクセスできない、改変不可領域に保管されたバックアップデータから迅速に復旧できる機能。
※7:ワークロードシフト:計算負荷(コンピューティング負荷)を時間的または空間的に移動させることで、電力需給バランスの調整やコンピューティングリソースの有効利用等を促進する技術。
※8:「ワットビット連携」構想:電力の単位「W(ワット)」と情報通信の単位「bit(ビット)」を組み合わせた造語であり、官民一体で、電力と情報通信のインフラ整備を一体的に進め、持続可能で効率的な社会基盤を築くための構想。
