結論:日本のIDaaS市場は高成長期へ
株式会社マーケットリサーチセンターの調査レポートによると、日本のIDaaS(Identity as a Service)市場は、2025年時点の1億4,762万米ドル規模から、2026年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)18.7%で拡大し、2035年には約8億1,970万米ドルに達すると予測されています。この約10年間で5倍以上に拡大する高成長市場は、サイバー攻撃の増加、クラウド移行、リモートワークの普及、EC(電子商取引)の拡大、データ保護・コンプライアンス対応、そしてパスワードレス認証や生体認証への移行といった要因によって支えられています。
IDaaS(Identity as a Service)とは?
IDaaS(Identity as a Service)とは、企業や組織のユーザーおよび従業員のデジタルIDをクラウドベースで一元的に管理し、誰がどのシステムやデータへアクセスできるかを制御するサービスです。これにより、アクセス管理のセキュリティと利便性を同時に向上させることが可能になります。
IDaaSが解決する企業の課題と提供するメリット
増加するサイバーセキュリティリスクへの対応
近年、ランサムウェア攻撃をはじめとするサイバー攻撃が増加しており、盗まれたIDやパスワード、過剰なアクセス権限が侵入経路となるケースが少なくありません。IDaaSは、MFA(多要素認証)やアクセス監視、自動的なアカウント管理機能を提供することで、これらのリスクを軽減します。
- MFA(Multi-Factor Authentication):パスワードだけでなく、ワンタイムコード、認証アプリ、生体認証など複数の認証要素を組み合わせることで、パスワードが流出した際にも不正ログインのリスクを抑制します。
クラウド・リモートワーク環境でのアクセス管理の複雑化
日本企業のIT環境がオンプレミス中心からSaaSやクラウドサービスを組み合わせた構成へ移行する中、従来の社内ネットワーク境界だけではアクセスを保護しにくくなっています。リモートワークの普及により、従業員がオフィス外からSaaSや社内システムへアクセスする機会が増加したことも、ID管理の重要性を高めています。IDaaSは「Zero Trust(ゼロトラスト)」型セキュリティモデルとの親和性が高く、場所を問わずユーザーの身元を確認し、アクセスを制御する基盤となります。「Zero Trust(ゼロトラスト)」とは、「何も信頼しない」という考え方に基づき、社内外問わずすべてのアクセスを常に検証し、最小限の権限を与えるセキュリティモデルです。
業務効率化とIT管理負担の軽減
IDaaSは、従業員や管理者の負担を軽減し、業務効率を向上させる機能も備えています。
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SSO(Single Sign-On):従業員が多数のクラウドサービスごとに異なるパスワードを管理する手間を減らし、一つの認証基盤を通じて複数のアプリケーションへアクセスできるようにします。これにより、パスワードの使い回し抑制やIT部門の管理負担軽減につながります。
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Provisioning(プロビジョニング):従業員の入社・異動・退職時に、アカウントとアクセス権限を自動的に付与・変更・停止する機能です。特に退職者のアカウントが残存することによる不正アクセスリスクを低減し、HRシステムなどと連携した自動化が有効です。
データ保護とコンプライアンス対応
誰がどのデータへアクセスしたかを記録し、アクセス権が適切かを定期的に確認できる「Audit(監査)、Compliance(コンプライアンス)、Governance(ガバナンス)」機能は、内部統制や監査への対応を容易にします。企業がクラウド利用を拡大するほど、アクセス権管理を部門ごとに個別運用する方法では限界が生じやすいため、IDaaSによる統合管理が求められます。
EC拡大に伴う顧客体験の向上とセキュリティ強化
EC市場の拡大に伴い、顧客向けID管理の需要も高まっています。ECでは、ログイン時のセキュリティを高めつつ、認証を複雑にし過ぎないことが重要です。IDaaSはセキュリティを強化しながら、顧客の利便性を損なわない認証基盤としても活用され、顧客体験の改善に貢献します。
導入形態と成長傾向
IDaaSの導入形態は、Public Cloud(パブリッククラウド)、Private Cloud(プライベートクラウド)、Hybrid Cloud(ハイブリッドクラウド)に分類されます。このうち、ハイブリッドクラウドが予測期間中CAGR20.4%で成長するとされ、市場全体の成長率を上回っています。これは、日本企業がすべてのシステムを一度にパブリッククラウドへ移行するのではなく、オンプレミスやプライベートクラウドに残る基幹システムと新しいSaaSを併用するケースが多いことに対応できるため、段階的なクラウド移行を支援する上で重要な役割を果たすと考えられます。
主要な活用業種
IDaaSは幅広い業種で導入が進んでいますが、特に以下の分野で高い成長が見込まれます。
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IT・通信:多数の従業員、開発者、顧客、パートナーがクラウド環境へアクセスするため、ID管理が複雑化しやすいこの分野では、CAGR22.4%と最も高い成長が予測されています。
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ヘルスケア:医師、看護師、事務職、患者、外部医療機関など複数のユーザーが機密性の高いデータへアクセスするため、役割に応じたアクセス権管理が重要です。CAGR20.9%の成長が予測されています。
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BFSI(銀行・金融サービス・保険):顧客情報や金融資産を扱うため認証強度への要求が高く、MFAや生体認証、アクセス監査などの導入価値が大きい分野です。CAGR19.3%の成長が予測されています。
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製造業:ランサムウェア攻撃の標的になりやすいだけでなく、工場、サプライヤー、本社、クラウドシステムなど複数環境にまたがってユーザーアクセスを管理する必要があるため、重要性が高まっています。
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政府:重要インフラや公共データを扱うため、セキュリティ基準への適合がIDaaS需要を支えています。
主要プレイヤーと今後の展望
IDaaS市場では、NEC、Thales、Oracle、Microsoft、Broadcom、Fujitsu、Authlete、Digital Arts、Atos、Oktaなどが主要企業として挙げられています。
将来的には、生体認証、端末情報、ログイン場所、行動パターンなど複数の要素を組み合わせてリスクを判断し、低リスク時には簡単な認証、高リスク時には追加認証を求めるようなリスクベース認証の価値が高まるでしょう。IDaaSは、単なるログイン管理サービスから、従業員・顧客・パートナーのデジタルIDを横断的に管理するクラウドセキュリティ基盤へと発展していくと予想されます。
導入を検討する担当者へ
IDaaSは、企業のDX推進とセキュリティ強化に不可欠なサービスです。詳細な情報収集や導入検討の際には、専門のベンダーへの問い合わせが推奨されます。
本記事の基となる調査レポートに関するお問い合わせは、株式会社マーケットリサーチセンターへ直接ご確認ください。
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