日本のサイバーセキュリティ市場、2035年に2倍の236.8億ドルへ拡大予測
情報システム担当者やDX推進担当者の皆様にとって、サイバーセキュリティは事業継続の生命線であり、その重要性は増すばかりです。株式会社マーケットリサーチセンターが発表した最新の市場調査レポートによると、日本のサイバーセキュリティ市場は2025年時点で約114.9億米ドル規模ですが、2026年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)7.5%で拡大し、2035年には約236.8億米ドルに達すると予測されています。この成長は、単なるIT投資ではなく、企業経営に不可欠な戦略的投資としてのサイバーセキュリティの重要性を明確に示しています。

市場拡大の背景と企業が直面する課題
サイバーセキュリティ市場が大きく成長する背景には、以下の複数の要因が挙げられます。
1. 高度化・多様化するサイバー攻撃
ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)やマルウェア(悪意のあるソフトウェア)、フィッシング(詐欺メールなど)、DDoS攻撃(大量の通信でサービスを停止させる攻撃)といったサイバー攻撃は年々増加し、その手口も巧妙化しています。特にランサムウェアは深刻で、2022年第1四半期から第2四半期にかけて攻撃件数が前年同期比で87%以上増加したとされています。製造業では工場設備や生産ラインの停止、医療機関では電子カルテや診療システムの停止など、事業継続に直接的な打撃を与えるリスクが高まっています。
2. リモートワークの定着とIoT機器の急増
リモートワークが普及し、オフィス外からのシステム接続が増えたことで、従来の「社内ネットワークの内側は安全」という前提が崩れています。また、交通、製造、医療など多様な分野でIoT(モノのインターネット)機器が導入されるにつれ、攻撃対象が爆発的に増加。これらの機器がDDoS攻撃の踏み台になったり、企業システムへの侵入口となったりする危険性があります。
3. 日本企業の構造的課題と人材不足
多くの日本企業では、長年システムの開発・管理を外部ベンダーに委託してきたため、自社内に十分なサイバー防御ノウハウを蓄積できていないという課題が指摘されています。特に中小企業は、大企業に比べてセキュリティ人材や予算が限られ、旧式システムを使い続けるケースも多く、サイバー攻撃の約54%が中小企業を狙ったものだったという報告もあります。これは、大企業を狙うサプライチェーン攻撃の入口として中小企業が利用される可能性も示唆しています。
これからの対策のキーワード:サイバーレジリエンスとゼロトラスト
市場の動向を見ると、単に攻撃を防ぐだけでなく、侵害が発生した後の対応が重要視されています。そのキーワードが「サイバーレジリエンス」と「ゼロトラスト」です。
サイバーレジリエンス:攻撃を前提とした事業継続性
サイバーレジリエンスとは、サイバー攻撃を受けても、迅速に検知し、被害を限定し、復旧できる能力のことです。完全にすべての攻撃を防ぐことは困難であるという前提に立ち、バックアップ、災害復旧、インシデント対応計画、模擬演習などが、今後のセキュリティ投資の重要な一部となります。
ゼロトラスト:信頼しないセキュリティモデル
リモートワークやクラウド利用が拡大する中で、「ゼロトラスト」という考え方が重要性を増しています。これは、社内外を問わずすべてのアクセスを信頼せず、ユーザー、端末、場所、アクセス先などを継続的に検証し、必要最低限の権限だけを与えることで被害範囲を限定するセキュリティモデルです。
注目の市場セグメントと対策ソリューション
1. サービス分野が成長を牽引
企業が自社でのセキュリティ運用に限界を感じる中、外部の専門企業によるセキュリティ運用サービス(マネージドセキュリティサービス:MSSや、脅威の検知・対応を代行するMDRなど)の需要が高まっています。サービス分野は2026~2035年にCAGR 8.3%で成長し、市場全体の成長率を上回ると予測されています。特に専門人材の不足が深刻な企業にとって、24時間365日の監視を外部に委託できるこれらのサービスは大きなメリットをもたらします。
2. 主要なソリューションと技術トレンド
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ID・アクセス管理(IAM)と多要素認証(MFA): クラウドやリモートワーク環境では、ネットワーク境界よりも「誰が」「どの端末から」「どの情報へ」アクセスできるかを管理するIAMの重要性が高まります。多要素認証(パスワードに加え、生体認証やスマートフォン認証などを組み合わせる方法)は、パスワード攻撃対策の基本です。
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エンドポイントセキュリティ(EDR/XDR): PCやサーバーの挙動を継続的に監視し、異常を検知・隔離するEDR(Endpoint Detection and Response)や、エンドポイントだけでなくネットワーク、メール、クラウドなど複数のデータを統合して攻撃全体を把握するXDR(Extended Detection and Response)が、未知の脅威への対応力を高めます。
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クラウドセキュリティとアプリケーションセキュリティ: クラウド環境では、設定ミスやアクセス権限の不備がリスクとなるため、設定管理、権限管理、ワークロード保護が重要です。また、ソフトウェア開発段階から脆弱性を減らす「Security by Design」や、開発(Dev)、セキュリティ(Sec)、運用(Ops)を一体化させるDevSecOpsの考え方も欠かせません。
3. 業種別の動向
特に金融機関を含むBFSI(銀行・金融サービス・保険)分野は、2025年には市場全体の約26%を占める最大のセグメントであり、2026~2035年にCAGR 8.6%で成長すると予測されています。顧客資産や個人情報を扱うため、サイバーセキュリティは信用維持のための不可欠な投資と位置付けられています。政府分野もCAGR 8.0%と高い成長が見込まれており、行政サービスのオンライン化に伴いサイバー防衛能力の強化が急務となっています。製造業においては、工場のIoT化やスマートファクトリー化に伴い、ITシステムだけでなくOT(Operational Technology、工場や設備制御系)セキュリティの重要性が高まっています。
市場を牽引する主要プレイヤーと連携の重要性
IBM、Microsoft、Cisco Systems、Amazon Web Services(AWS)、富士通、Intel、Dell、Fortinet、F5といった企業が主要プレイヤーとして挙げられます。Microsoftはクラウド、OS、IDなどを一体的に提供し、AWSはクラウドインフラとそのセキュリティ機能に強みを持っています。Ciscoはネットワーク、FortinetやF5はネットワーク・アプリケーション保護に強みを発揮します。富士通のような国内企業は、日本企業のIT環境や規制への深い理解を活かした提案が期待されます。
また、Googleが東京にサイバー防衛拠点を新設するなど、サイバー攻撃が国境を越える中で、国際連携による脅威インテリジェンスの共有や共同対策が日本のサイバーセキュリティ能力を高める上で不可欠です。
レポートの活用方法と導入検討
この市場調査レポートは、情報システム部門の予算策定、DX推進におけるセキュリティ戦略の立案、新たなセキュリティソリューション導入の検討において、客観的なデータに基づいた意思決定を支援します。
具体的には、自社の業種や規模、現在のセキュリティ課題と照らし合わせながら、将来の市場トレンドを把握し、どの分野に重点的に投資すべきか、どのようなサービスやソリューションが有効かといった検討に役立つでしょう。特に、サイバーレジリエンスの強化やゼロトラストモデルへの移行、マネージドサービスの活用などは、多くの企業にとって喫緊の課題であり、レポートはこれらの具体的な方向性を示す指針となります。
詳細なレポート内容やお問い合わせについては、株式会社マーケットリサーチセンターのウェブサイトをご確認ください。
企業規模を問わず、サイバーセキュリティ対策はもはや「コスト」ではなく「未来への投資」です。本レポートが、皆様の企業のデジタル変革と持続的な成長を支える一助となることを期待します。
