データセンターラック内CDUポンプ市場、AI需要で急成長へ – 2032年には2.3億ドル規模に

データセンターラック内CDUポンプ市場、AI需要で急成長へ – 2032年には2.3億ドル規模に

1. データセンターラック内CDUポンプ市場が急成長する背景

AI技術の進化と大規模なAIインフラの構築は、データセンターの熱密度を劇的に高めています。この高発熱化に対応するため、液冷技術、特にラック搭載型CDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配ユニット)が不可欠となっています。CDUポンプは、このCDU内部で冷却液の流量と差圧を確保する重要な部品であり、市場は従来のニッチなHPC(高性能計算)向けから、AIインフラを支える主要な成長市場へと変貌を遂げています。

2. 市場規模と今後の成長予測

QY Researchのレポートによると、データセンターラック内CDUポンプの市場は、2025年の売上高2,597万米ドル、販売数量3万6,530台から、2032年には売上高2億3,812万米ドル、販売数量32万2,760台に達すると予測されています。この期間の売上高CAGR(年平均成長率)は32.80%、数量CAGRは33.88%と、出荷数量の増加が市場拡大の主な要因となる構造です。

データセンター向け冷却システムとサーバーラックのイラスト

3. AIラックの高発熱化が牽引する技術トレンド

AIサーバーのラック発熱量増大に伴い、CDUポンプには高流量・高圧化が求められています。約70~250 L/minの流量クラスの製品が主流となりつつあり、例えばNidecの4U In-Rack CDUは200~250 kWの冷却能力を対象としています。ポンプ単体の性能だけでなく、電力密度、信頼性、保守性、冗長性も調達判断の重要指標となっています。

特にGB200 NVL72ラックのような高密度AI向けラックでは、約120 kWの冷却能力が必要とされ、これが市場全体の高出力化を加速しています。

データセンターラック内CDUポンプ市場の調査レポート概要

4. 高出力化と液冷方式の変化

製品の出力クラス別に見ると、1kW未満のポンプは数量ベースで多数を占めるものの、売上高では1~2kW、そして2kW超の製品が高単価で、より高い成長性が見込まれています。2026年から2032年の売上高CAGRは、2kW超の製品で36.04%と最も高くなっています。

冷却方式では、Liquid-to-Liquid型(冷却液と施設側冷却水を熱交換する方式)が市場の大部分を占め、2025年には数量で83.06%、売上高で86.33%を占めました。AIラックと施設側冷却水を直接接続する高密度液冷構成において、このLiquid-to-Liquid型が標準アーキテクチャとして定着する可能性が高まっています。

5. 競争環境と主要プレイヤー

2025年の市場では、Nidecが世界市場シェア35.04%で首位を占め、Concentric、Panasonic、Delta、GRI Pumps(Gorman-Rupp Company)がそれに続いています。各社は独自のポンプ技術、信頼性設計、総合的な熱管理ソリューションなど、それぞれの強みを生かして競争を展開しています。

サプライチェーンにおいては、永久磁石、BLDCモーター(ブラシレスDCモーター)、半導体、軸受、精密インペラー、センサー、制御装置などが重要な要素です。高出力化が進むにつれて、磁気回路効率、ローター熱管理、駆動効率、材料耐久性といった要素が製品の性能を左右します。

6. 主要な需要領域と地域構造

用途別では、Hyperscale Cloud & AI Compute Operators(大規模クラウド・AI計算事業者)が最大の需要領域であり、2025年の数量で48.23%、売上高で52.71%を占めています。Colocation & Data Center Operators(コロケーション・データセンター事業者)やResearch & Government(研究機関・政府機関)などがこれに続きます。Edge & Distributed Computing Service Providers(エッジ・分散コンピューティングサービス事業者)は現在規模は小さいものの、高い成長性が見込まれる新規需要源となる可能性があります。

地域別では、消費量でAsia-Pacificが37.80%、North Americaが34.49%、Europeが24.06%を占めています。生産面では、JapanとTaiwanが輸出志向型の供給拠点として重要であり、Chinaでは現地化が進む余地があります。

7. まとめと情報システム担当者への示唆

データセンターラック内CDUポンプ市場の急成長は、AIインフラの進化と液冷技術の普及が不可逆なトレンドであることを示しています。情報システム担当者やDX推進担当者にとっては、今後のデータセンター設計、特に高密度化するAIワークロードへの対応において、液冷ソリューションの導入が喫緊の課題となるでしょう。

ポンプの選定においては、最大流量だけでなく、ポンプ曲線効率、寄生電力、冷却液適合性、テレメトリー(遠隔測定)、保守性、長期信頼性、トレーサビリティといった要素が重要になります。今後は「高性能ポンプ単体」ではなく「AIラック全体の熱管理性能」を基準とした製品設計が市場シェアを左右すると考えられます。

本記事は、QY Research発行のレポート「データセンターラック内CDUポンプ―グローバル市場シェアとランキング、全体の売上と需要予測、2026~2032」に基づいています。

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