AI・生成AI活用の前に不可欠な「データ基盤」整備:製造業DX事例1,202件から見えた現実と具体的な打ち手
製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進において、AI(人工知能)や生成AI(テキスト、画像などを生成するAI)の活用が注目されています。しかし、株式会社パブリカが運営するものづくり新聞の最新調査「製造業DX事例分析vol.11」では、AI活用の前に、データ基盤の整備が不可欠であることが浮き彫りになりました。
1,202件の製造業DX事例を分析した結果、クラウド、データ統合、BI(ビジネスインテリジェンス)・可視化、IoT(モノのインターネット)・設備データ活用が、AI・生成AI活用を成功させるための土台となることが示されています。
調査の背景:データの分断がDXを阻害
製造業では、生成AI、AI検査、予兆保全、スマートファクトリー、デジタルツイン、サプライチェーン最適化など、データ活用を前提としたDXテーマが広がっています。一方で、現場では設備データ、品質データ、保全履歴、生産実績、設計データ、調達・販売データなどが部門別・システム別に分散しており、データを横断的に活用することは容易ではありません。
このような課題に対応するため、製造業ではクラウド、データ基盤、BI、IoT、設備データ収集、データ統合基盤などを整備し、現場改善や経営判断に活用する取り組みが進んでいます。
1,202件の事例から見えたデータ基盤活用の実態
今回の分析では、クラウド・データ基盤関連事例1,202件を以下の4分野に分類しています。
| 分類 | 件数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| IoT・設備/工場データ | 549件 | 設備データ、工場データ、センサー、IoT、エッジ活用 |
| BI・可視化・分析基盤 | 445件 | ダッシュボード、BI、データ分析、見える化 |
| クラウド基盤 | 408件 | Azure、AWS、Google Cloudなどのクラウド活用 |
| データ統合・データ基盤 | 109件 | データ基盤、データ統合、データレイク、DataOpsなど |
最多はIoT・設備/工場データ活用
最も事例が多いのはIoT・設備/工場データ活用で549件でした。この分野では、設備データ、センサーデータ、工場データ、エッジ活用などを起点に、稼働状況の把握、異常検知、保全、品質改善、生産性向上につなげる取り組みが多く見られます。製造現場では、データを収集するだけでなく、現場担当者が使える形で可視化し、改善活動や意思決定につなげることが重要であり、IoTや設備データ活用はデータ基盤整備の入り口となりやすいテーマと言えます。
BI・可視化・分析基盤は現場と経営をつなぐ
「BI・可視化・分析基盤」は445件でした。ダッシュボード、BI、データ分析、見える化などの取り組みは、工場や部門に分散したデータを、現場担当者、管理者、経営層が理解しやすい形に変換する役割を担います。AIや高度な分析を導入する前段階として、まずはデータを見える化し、業務判断に使える状態にすることが重要です。特に中堅・中小製造業では、紙帳票やExcel管理からの移行、現場ダッシュボードの整備、日々のKPI(重要業績評価指標)管理などが現実的なDXの入口となっています。
クラウド基盤はAI・生成AI活用の土台
「クラウド基盤」は408件でした。Microsoft Azure、AWS、Google Cloudなどのクラウド基盤は、設備データや業務データを蓄積・分析し、AIや生成AIと連携させるための土台として活用されています。クラウド活用は、単なるシステム移行にとどまらず、拠点横断のデータ活用、グローバル工場管理、AIモデル開発、生成AI活用、サプライチェーン可視化などの基盤として位置づけられています。
データ統合・データ基盤は部門横断DXの中核に
「データ統合・データ基盤」は109件でした。データレイク(あらゆる形式のデータをそのまま保存する場所)、データウェアハウス、DataOps(データ分析パイプラインの効率化手法)、Cognite Data Fusion、Databricks、Snowflakeなどに関連する事例が含まれます。製造業DXでは、生産、品質、保全、設計、調達、販売などのデータをつなぐことが重要であり、部門ごとの個別最適を超えて全社的なデータ活用を進めるには、データを収集・統合・意味づけし、業務で使える形に整える基盤が必要となります。
DX領域別・業種別の傾向
DX領域別に見ると、生産・製造領域がもっとも多く、次いで経営・全社基盤、SCM(サプライチェーンマネジメント)・物流・調達などが続きました。このことから、クラウド・データ基盤は、特定の部門だけでなく、製造現場から経営管理まで広い領域にまたがるテーマであることが分かります。

業種別では、機械・装置、電機・電子、素材・プロセス、自動車などが上位を占めました。これらの業種では、設備データ、品質データ、設計・製造データを活用する余地が大きく、クラウド・データ基盤整備のニーズが高いと考えられます。

分析から見えた3つの傾向
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AI・生成AI活用の前提として、データ基盤整備が重要になっている
生成AIやAI分析は、社内データや現場データが整備されていなければ十分に活用できません。公開事例からも、AI活用の前段階として、データ収集、統合、可視化、クラウド基盤整備に取り組む企業が多いことが分かります。 -
工場データの活用が、現場改善と経営判断の双方に広がっている
設備データや工場データは、現場の稼働管理や異常検知だけでなく、品質改善、保全、原価管理、サプライチェーン管理、経営ダッシュボードにも活用され始めています。現場データを経営に接続することが、製造業DXの重要テーマになっています。 -
クラウド・データ基盤は単独導入ではなく、ERP、MES、PLM、BI、AIと組み合わせて活用される
クラウドやデータ基盤は、それ単体で完結するものではありません。ERP(基幹業務システム)、MES(製造実行システム)、PLM(製品ライフサイクル管理システム)、設備システム、BI、AI、生成AIと接続することで、業務横断のデータ活用が可能になります。今後は、個別ツール導入よりも、データの流れを設計する力が重要になると考えられます。
製造業が検討すべき視点
DX推進担当者や情報システム担当者がデータ基盤整備を進める上で、以下の視点を持つことが推奨されます。
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まず自社のデータがどこにあり、どの業務で使われているかを把握すること:現状のデータフローを可視化し、課題を特定します。
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設備データ、品質データ、保全履歴、生産実績、設計データなどをどの単位で接続するかを設計すること:データの連携範囲と粒度を明確にします。
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クラウド移行を目的化せず、業務課題や活用シーンから逆算すること:クラウド導入が目的とならないよう、具体的なビジネス価値を追求します。
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BIやダッシュボードを通じて、現場と経営が同じデータを見られる状態を作ること:データに基づいた意思決定を促進します。
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AI・生成AI活用の前提として、データ品質、権限管理、セキュリティを整えること:信頼性の高いデータ活用基盤を構築します。
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PoC(概念実証)で終わらせず、現場業務に定着する運用設計と人材育成を行うこと:導入後の運用体制とスキルアップ計画を策定します。
今後の展開と関連情報
ものづくり新聞では、製造業DX事例データベースを活用し、AI外観検査、品質データ分析、トレーサビリティ、予兆保全、スマートファクトリー、MES、PLM、生成AI活用など、製造業DXの主要テーマについて継続的に分析・発信を続けています。
また、製造業向けDX教育事業「Innovation Maker Academy」やコンサルティング活動においても、実際の公開事例をもとに、企業ごとの課題に即した情報提供や学習コンテンツの拡充を進めています。
関連リンク
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株式会社パブリカ: https://publica-inc.com/ja/
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ものづくり新聞: https://makingthingsnews.com/
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製造業向けDX人材育成プログラム「Innovation Maker Academy」: https://imacademy.jp/
社員教育やDX人材に関するご相談、本件に関するお問い合わせは、ものづくり新聞 編集部(製造DX担当:dx@publica-inc.com)までご連絡ください。
