商業施設における顧客エンゲージメント戦略として、交通系ICカードを活用したキャンペーンが成果を上げています。さいたま新都心のけやきひろばで実施された「タッチでクーポン」企画は、2026年1月~3月の初開催時に約10万回の参加を記録。このデジタルタッチポイント活用の事例から、リテール施設のDX推進における実践的な示唆が得られます。
クーポン配信のデジタル化で、顧客接触頻度を3倍に
株式会社さいたまアリーナが展開する「タッチでクーポン~寄ってけヤキ!~」は、PASMOやSuicaなどの交通系ICカード(モバイル対応)をかざすだけで、その場でクーポンが当たるキャンペーンです。2026年6月5日(金)~7月5日(日)の期間、けやきひろば1階にて毎日11時~21時に実施されます。
このアプローチが注目される理由は、既存の決済インフラを活用することで、参加障壁を極限まで低くしている点です。専用アプリのダウンロードやユーザー登録は不要で、日常的に利用するICカードをタッチするだけ。結果として初回実施時には約10万回の利用を達成しており、継続実施による顧客との接触強化戦略として機能しています。
施設内での購買行動データの蓄積がポイント
クーポンの内容は、館内共通利用券(200円~2,000円)と個別店舗向け金券の組み合わせです。タッチデータを集約することで、顧客がいつ・どのタイミングで来館し、どの店舗に関心があるかが可視化されるメリットがあります。
このデータは、以下の経営判断に活用できます。
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来館ピークの特定と配置人員の最適化
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テナント別の集客トレンド分析
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季節キャンペーンの効果測定
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次回来館予測に基づくターゲット化された施策立案
複合イベント企画で、滞在時間延長を実現
6月のキャンペーン期間中には、クーポン企画だけでなく複数のイベントを同時開催しています。これにより、来館目的を多層化し、施設全体の利用者数向上を図るアプローチが取られています。
6月13日(土)~14日(日)の「けやきde大道芸」では、ヘブンアーティストによるパフォーマンスを実施。パフォーマー名としては「ソランポ・ソラン」「SUKE3&SYU」「チクリーノ」「マサトモジャ」「せせらぎ」の5組が登場し、14日には埼玉県のローカルヒーローキャラクターも出演予定です。
同期間に開催される「おもちゃの広場&エデュベンチャー」は、東京おもちゃ美術館が選定するグッド・トイを活用した親子向け体験スペースです。1家族30分500円の利用料で複数のおもちゃで遊べるほか、スライムづくりなどのワークショップを併設することで、家族単位の滞在時間を延長させる設計になっています。
定期化・季節化によるリピート来館の仕組み化
注目すべきは、このキャンペーンが単発ではなく定期開催される設計になっている点です。以下のイベントが通年で展開されます。
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「フリーマーケットinさいたま新都心けやきひろば」:6月6日~7日、17日(毎月1~2回開催予定)
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「けやきの下のマルシェ」:6月20日~21日(毎月1~2回、土日に開催)
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「LOVE JAZZ TIME 2026」:6月28日、7月5日(4月~11月、毎月1回開催予定)
これらの定期化された企画により、顧客は「来月も何かある」という期待値を持ち続け、リピート来館の動機づけが継続的に生成されます。季節ごとのテーマ設定(初夏のけやき彩)も、訪問理由を常に新鮮に保つ工夫です。
デジタルとアナログの融合による体験価値の創出
本事例の成功要因は、決済・クーポン配信というデジタル施策と、ライブパフォーマンスやワークショップというアナログな体験を組み合わせている点にあります。
タッチクーポンだけであれば、参加の利便性は高いものの、来館動機としては限定的です。しかし大道芸やおもちゃの広場といったイベントを同時展開することで、家族層や親子連れといった購買力の高いセグメントを引き込みやすくなります。結果として、クーポン利用者そのものが増加し、施設内での購買金額も増える好循環が生まれます。
経営判断への活かし方
商業施設やテナント運営に携わる経営層・企画担当者にとっての示唆は以下の通りです。
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既存インフラの活用:新規システム構築を避け、交通系ICカードなど普及済みの決済手段をマーケティングツール化する
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データ収集の視点:クーポン配信を集客手段から「顧客接触データの取得メカニズム」へ発想転換する
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体験価値の層状設計:デジタル施策とアナログイベントを構造的に組み合わせ、来館理由を多層化する
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継続性の確保:短期キャンペーンではなく、定期化・季節化により顧客の期待値と来館頻度を継続的に管理する
DX推進の現場では、テクノロジー導入それ自体が目的化しやすい傾向があります。本事例は、顧客の行動データを集め、それを基に次のアクションを設計するというPDCAサイクルが、施設集客においても有効に機能することを示しています。
【参考】株式会社さいたまアリーナ「初夏のけやき彩」キャンペーン公式ページ:https://www.saitama-arena.co.jp/
