国内で不正アクセスによる情報漏洩が相次ぐなか、株式会社オプティムは、多要素認証サービス「OPTiM ID+(プラス)」を無償で提供すると発表しました。対象は、2026年12月28日までに申し込んだ法人です。期間を区切ったトライアルではなく、サービスの提供が続く限り無償で使えます。費用や体制の問題でID対策を後回しにしてきた企業にとって、見直しを始める現実的なきっかけになりそうです。
IPAの注意喚起を受け、「入口対策」の普及を狙う
判断の背景には、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2026年10月9日に公表した注意喚起「不正アクセスによる漏えい等の事案を踏まえ、速やかに実施すべき対策等について」があります。国内の金融機関や通信事業者などで漏洩事案が続いたことを受けたもので、外部に公開されているアプリケーションやサービス、アカウントへの侵害が不正アクセスの起点になっている可能性を指摘しています。
IPAは企業に対し、主に次のような緊急点検と見直しを求めています。
- 外部公開システムの脆弱性対応状況とアクセスログの点検
- 利用中のクラウドサービスの洗い出しと、不審なアカウントの有無の確認
- 多要素認証の導入やパスワード認証の強化
- アカウント権限の見直しと、アカウントの棚卸し
クラウドサービスの利用が広がった今、ID・パスワードの使い回し、退職者アカウントの消し忘れ、アクセス権限の管理不備は、どの企業でも起こりうるリスクです。被害は自社だけでなく顧客や取引先にも及ぶ可能性があります。一方で、対策の必要性は分かっていても、導入コストや運用体制が壁になって手を付けられない企業も少なくありません。オプティムは、この「分かっているのに進まない」状況を、無償化によって解消したい考えです。
「OPTiM ID+」でできることと、無償提供の条件
主な機能
「OPTiM ID+」は、複数のクラウドサービスのログイン情報をまとめて管理し、認証の安全性と使いやすさを両立させるIDaaS(クラウド型ID管理サービス)です。主な機能は次の3つです。
- 多要素認証:メールで届く認証コードや認証アプリを使った本人確認
- シングルサインオン(SSO):SAMLに対応したクラウドサービスへのログインを一本化
- ID管理・ユーザー情報連携:IDを一元的に管理し、対応サービスとユーザー情報を連携
対象と条件
対象は、現時点で「OPTiM ID+」を契約していない法人です。申込企業数や利用ID数に一律の上限は設けられていません。申し込みの際には、社内のIT環境に関するヒアリングへの回答が必要です。なお、一部の機能、別途SSOオプションの契約が必要なサービス、連携先クラウドサービスの利用料、個別の導入・運用支援の費用は無償の対象外です。対象機能や利用条件の詳細は、申し込み時に案内されます。
個別の導入相談や導入支援、運用サポートも無償提供には含まれません。社内に情報システム担当者がいない、または手が足りない場合は、ヘルプデスクやアカウント管理、SaaS管理などを必要な時間と範囲で依頼できる有償サービス「OPTiM Biz 情シス代行」を併用する方法があります。より高度な情報漏洩対策を求める企業には、「OPTiM Biz」や「OPTiM Biz Premium」(いずれも有償)も選択肢として示されています。
端末管理の知見を、ID管理にも広げる
オプティムは2011年からMDM(モバイルデバイス管理)サービスを提供しており、主力のMDM・PC管理サービス「OPTiM Biz」は国内シェアNo.1(2026年10月時点、同社によるWeb調査)としています。上位版の「OPTiM Biz Premium」では、ID管理(SSO)に加えて端末の操作ログ、SaaS管理、物品管理を一つのサービスで扱えます。「誰が・どの端末で・どのサービスに対して・何をしたか」を一元的に把握することで、情報漏洩リスクを多層的に下げる設計です。また同社は、IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)」実証事業に採択されており、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」の★3・★4取得を目指す企業の支援にも取り組んでいます。
代表取締役社長の菅谷俊二氏は、端末を守るだけでは十分ではなくなり、情報漏洩の多くはIDとパスワードという「入口」から始まっていると指摘しています。そのうえで、AIを悪用したサイバー攻撃の脅威が急速に増すなか、どの企業も対策を先送りできる状況ではないとし、まずは「入口を守る」ことから始めてほしいと呼びかけています。多要素認証の導入を検討しながら予算化に踏み切れていなかった企業は、12月28日の申込期限を目安に、自社のアカウント管理の現状を点検しておくとよいでしょう。
出典:株式会社オプティム
