デル・テクノロジーズ「中堅中小企業IT投資動向調査2026」発表:AI投資が標準化、ITインフラはモダン回帰へ

デル・テクノロジーズ「中堅中小企業IT投資動向調査2026」発表:AI投資が標準化、ITインフラはモダン回帰へ

1. 調査の概要と目的

デル・テクノロジーズは、日本の中堅中小企業を対象に「中堅中小企業向けIT投資動向調査2026」を実施し、その結果を発表しました。この調査は2017年から毎年行われており、変化の激しいIT市場において、企業が「何に投資し、何に悩み、どこに向かうのか」をデータで可視化することを目的としています。特に今回は、メモリ/SSD価格の高騰、Windows 11以降への移行、仮想化基盤やHCI(ハイパーコンバージドインフラ)から次世代アーキテクチャへの移行、そして生成AIの急速な普及がIT投資に与える影響に焦点を当てています。

2. AI投資がIT投資の最重要項目に

2026年の調査では、AI/生成AIへの投資がIT投資項目のトップに躍り出ました。これは、AIが企業にとって不可欠なテクノロジーとなりつつあることを示しています。
AI/生成AIに100万円以上投資を予定する企業は全体の68.1%に達し、本格的な投資対象として位置づけられています。
2025年と2026年のAI・生成AIにかかる想定コストの分布
AI PC(AI処理に特化した機能を搭載したPC)の活用はまだ限定的ですが、2026年は「AI PCの実験フェーズ」から「用途が明確な業種での本格活用」への移行期と見られています。AI投資全体の増加に伴い、AI PCのニーズも拡大していくと予想されます。
AI PCの導入・検討状況
また、グループウェアと同一ベンダーのAIサービス(CopilotやGeminiなど)が第一候補となる傾向がある一方で、複数のAIサービスを併用する企業も多数派となっています。

3. ITインフラの現状とモダン化への回帰

中堅中小企業のITインフラ基盤は、依然として「オンプレミス中心」(自社内でサーバーなどのIT資産を保有・運用する形態)が51.8%、「ハイブリッド」(オンプレミスとクラウドを組み合わせて利用する形態)が23.6%と多数を占めています。
ITインフラの利用比率
Broadcomショック(Broadcom社によるVMware買収後のライセンス体系変更など)を背景に、HCI(ハイパーコンバージドインフラ、サーバーやストレージ、ネットワーク機能を統合したシステム)から3Tier(スリーティアアーキテクチャ、プレゼンテーション層、アプリケーション層、データ層の3層に分かれたシステム構成)への移行など、「脱VM」(仮想マシンからの脱却)の動きが加速していることが鮮明になっています。

ハードウェアの部材高騰が続く中でも、PCの刷新は「予定通り」(44.0%)、「前倒し」(22.4%)を合わせて約66%の企業が継続・加速する意向を示しています。
PC刷新計画に関する円グラフ
一方で、高額なサーバー投資については3割以上の企業が「保留」と回答しており、慎重な姿勢がうかがえます。
Windows 11への移行自体は7割弱の企業で完了していますが、約3割は「一部のみ/これから」と回答しており、旧OSを抱えたまま長期利用している層が残存しています。PCの更新サイクルが「5年以上」の企業が過半数(52.8%)を占めることから、性能不足やセキュリティリスクを抱える期間が長期化する懸念があります。
従業員規模別のWindows 11への移行状況

データセンターの利用企業では約6割が何らかの課題を抱えており、特に従業員規模が大きい企業ほど「運用コストの上昇」と「人材・スキル不足」が顕在化しています。GPUサーバーの導入は全体で1割未満と少数派ですが、導入企業では推論・学習・VDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ環境)など用途が多様化し、AI PCやモジュラーDC(モジュール型データセンター)とのハイブリッド構成を志向する動きが見られます。

4. サイバーセキュリティとデータ保護の課題

直近半年間で約6社に1社(16.2%)が何らかのセキュリティ事故を経験しており、その内容はフィッシング詐欺、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)、不正ログインが上位を占めています。
セキュリティ事故の被害状況
セキュリティ事故の内容とその発生割合
ランサムウェア被害からの復旧期間は1か月以内が中心で、調査・復旧費用は100万円未満が過半数となっています。メール・Web・VPN(Virtual Private Network)を入り口とした侵入が大きなリスクであることが示されています。
ランサムウェアに関する中小企業と中堅企業の調査結果
ランサムウェア対策として最も重視されているのは「バックアップ」(61.2%)ですが、データ復旧に自信がある企業は約4割にとどまっており、「備え」と「確実な復旧」の間にギャップが存在します。
ランサムウェア対策として企業が重視している項目
データ復旧への自信度
多層防御(複数のセキュリティ対策を組み合わせることで防御力を高める考え方)や具体的な導入計画は、特に中小企業で大きく不足しています。
企業規模別のランサムウェア対策の重視項目とバックアップ導入状況
セキュリティ運用の課題としては、ポリシー未整備やパスワードルールなしといった「ゼロからの整備」型課題は減少傾向にあるものの、「どこまで実施できているか分からない」「最新の脅威情報の収集先がない」「パッチ適用・脆弱性対応が追いつかない」といった、運用・可視化・継続改善に関する課題が目立つようになっています。
情報セキュリティ対策を進めるうえでの課題
SASE(Secure Access Service Edge、ネットワークとセキュリティ機能をクラウドで統合するサービス)やZTNA(Zero Trust Network Access、ゼロトラストの原則に基づくネットワークアクセス制御)といったゼロトラスト関連技術を導入する企業でも被害は必ずしも減っておらず、ツール導入だけでなく、運用プロセスの構築や従業員教育の有無が成否を分けていると分析されています。
SASE/ZTNAとIAMの導入状況

5. クラウド・SaaS活用の実態

クラウドサービスの利用動向を見ると、IaaS(Infrastructure as a Service、仮想サーバーなどのインフラをサービスとして提供)の普及率は約39%で頭打ちの傾向が見られます。一方で、オンラインストレージは半数超の企業が本格利用段階に達しています。
IaaSとオンラインストレージの利用状況
IaaSの利用用途としては、グループウェアやファイル管理、バックオフィス業務を中心にクラウド利用が進んでいますが、受発注・生産・在庫などの基幹系システムのクラウド移行は限定的な状況です。利用サービスでは、AWS(Amazon Web Services)とMicrosoft Azureが突出しており、事実上2大選択肢となっています。
IaaSの利用用途と利用サービス
クラウドバックアップの利用は「まだ3割強」、未利用が4割超となっており、バックアップ自体は広く実施されているものの、クラウドを活用した「オフサイト・バックアップ」(遠隔地へのデータ保管)や「災害対策」まで踏み込んでいる企業はまだ少ない状況です。
クラウドバックアップの利用割合

6. DX推進の現状と人材戦略

DX(デジタルトランスフォーメーション、デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化を変革すること)の推進体制については、約9割の企業でIT部門が中心となっています。DX人材確保の軸は「自社育成+外部連携」のハイブリッド型が主流です。
DX企画の主管部門とDX人材確保経路
DXの取り組み状況としては、ワークフローの電子化など「電子化・見える化」が主戦場であり、約半数の企業がDXが「進んでいない・遅れている」と自己評価しています。
DXに関する取り組み状況

7. 調査結果の総括

今回の調査結果から、中堅中小企業のIT投資動向における主要なトレンドが明らかになりました。

  • AI投資の標準化: AI/生成AIへの投資がIT投資の最重要項目となり、全社的なAI活用が前提となる時代へと移行しています。

  • 脱VMからモダンインフラへのIT投資回帰: オンプレミスとハイブリッドが中心となり、HCIや3Tier環境の再構築など、ハイパーバイザー(仮想化ソフトウェア)の複線化検討が加速しています。

  • 価格高騰下のPC刷新とサーバー投資の選別: メモリ・SSD高騰の影響を受けつつもPC刷新は進められる一方、サーバー投資は慎重な姿勢が見られます。旧環境を抱える企業は投資を先送りする傾向があります。

  • セキュリティ・BCP(事業継続計画)の高度化: セキュリティ事故経験企業が多く、バックアップへの依存が増加しています。イミュータブル保管(変更・削除が不可能なデータ保管)など、ゼロトラスト整備における企業間の格差が拡大しています。

  • 経営主導ITへのシフト: IT人材、インフラ、セキュリティ、AIが成長のボトルネックとなる中、経営層が主導するITロードマップの策定が求められています。

これらの結果は、中堅中小企業が直面するIT課題と、デジタル化を進める上での具体的な方向性を示唆しています。

8. デル・テクノロジーズについて

デル・テクノロジーズ(NYSE:DELL)は、企業や人々がデジタルの未来を築き、仕事や生活の仕方を変革することを支援しています。同社は、AI時代に向けて、業界で最も包括的かつ革新的なテクノロジーとサービスのポートフォリオを顧客に提供しています。