製造業DXの新たな潮流:現場から全社への拡大
製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、かつて生産現場の効率化に焦点が当てられがちでした。しかし、最新の分析によると、DXは設計から経営に至るまで、企業のあらゆる部門へとその範囲を広げています。
株式会社パブリカが運営する「ものづくり新聞」は、約4,000件の製造業DX関連事例を蓄積する「製造業DX事例データベース」に基づき、3,815件の事例を詳細に分析しました。この分析から、製造業DXは単なる現場改善に留まらず、部門間のデータ連携を通じて全社的な変革へと進化している実態が浮き彫りになりました。

7部門に広がるDXテーマと具体的な事例
今回の分析では、製造業のDXを以下の7つの部門に分類し、それぞれの主要なDXテーマと具体的な事例を整理しています。
1. 設計・開発部門
主なDXテーマ: PLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)、CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)、生成AI、CAD/3Dデータ、BOM(部品表)、デジタルスレッド
課題と解決策: 設計データや技術文書を部門横断で連携させ、設計変更や検証プロセス、エンジニアリングチェーン全体の高度化を目指します。
事例:
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ヴァレオ(海外):ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCEプラットフォーム」導入により、R&D・購買・製造を統合し、生成AIで設計の複雑性を管理。
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RICOS(日本):物理学知見に基づくAIによるCAE技術で、自動車メーカーが設計効率化を実証。
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トヨタシステムズ(日本):30年以上のCAE技術を基盤に、AIによる性能予測・最適設計を統合したCAE×AIシミュレーションを実践。
2. 製造部門
主なDXテーマ: MES(製造実行システム)、IoT(モノのインターネット)、ロボット、自動化、設備データ、現場見える化
課題と解決策: 生産現場のデータをリアルタイムで取得し、工程、設備、人、ロボットをつなぐことで、現場改善や自動化、生産性向上を実現します。
事例:
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株式会社ニチレイ(日本):スマートファクトリーでAI画像認識による自動検品を実現。
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現代自動車(韓国):AI・ロボティクス・IoTを統合したスマート都市型工場「HMGICS」を開設し、デジタルツイン技術で柔軟な生産システムを構築。
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美的集団(中国):AI「Factory Brain」が14のスマートエージェントを統制し、手作業を秒単位で完了させ、効率を80%向上。
3. 品質部門
主なDXテーマ: AI検査、品質データ、異常検知、画像認識、トレーサビリティ
課題と解決策: 検査の自動化だけでなく、品質データを蓄積・分析することで、不良要因の特定や工程改善、品質基準の統一につなげます。
事例:
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制御機器部品メーカー(日本):AI Fine Matching技術で外観検査を自動化し、微細傷判定精度向上と調整工数を1/10に削減。
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マルハニチロ株式会社(日本):カット野菜用AI外観検査装置「TESRAY Gシリーズ」を導入し、選別作業の省人化と品質基準の統一を実現。
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フレックス(メキシコ/グローバル):AI/ML(機械学習)を活用した電子製品検査・テストプロセス最適化により、テスト時間を20〜25%短縮。
4. 保全部門
主なDXテーマ: 予兆保全、設備監視、保全履歴、点検支援、遠隔監視
課題と解決策: 設備の状態や保全履歴をデータ化し、停止リスクの低減、点検効率化、技能継承に貢献します。
事例:
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日立製作所(日本):時系列基盤モデルを工場の予知保全に適用し、機械1台当たりのダウンタイム発生件数を半減。
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セラミックタイル製造企業(企業名非公開):マルチエージェント系による予知保全システムが94%の予測精度と43%のダウンタイム削減を実現。
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BlueScope Steel(オーストラリア):SiemensのSenseye予知保全ソリューションを導入し、3年間で約2,000時間のダウンタイムを回避。
5. 調達・SCM部門
主なDXテーマ: 需要予測、在庫、物流、調達DX、サプライチェーン可視化
課題と解決策: 需要・供給・在庫・物流を横断的に見える化し、変動に強いサプライチェーン(供給網)運営を実現します。
事例:
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Albertsons(米国):AfreshのAI駆動型フレッシュ補充・インベントリソリューションを全国2,200店以上に展開し、需要と注文・販売データの整合性を向上。
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ヴァレオ(グローバル):o9デジタルブレイン・プラットフォームにより、170以上の拠点・29カ国のSIOP・MPS統一化を実現し、リアルタイム意思決定を強化。
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コカ・コーラ(北米):Coke One North America(CONA)ERPで12ボトラーを統合し、倉庫ロボット、AI需要予測を導入。納期を99%達成し、処理時間を50日→7日に短縮。
6. 営業・顧客接点部門
主なDXテーマ: CRM(顧客関係管理)、生成AI、顧客データ、問い合わせ対応、デジタル販売
課題と解決策: 顧客データや生成AIを活用し、営業提案、問い合わせ対応、デジタル販売、顧客体験の高度化を進めます。
事例:
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株式会社トプコン(日本):SAP S/4HANA CloudおよびSAP Commerce Cloudを導入し、グローバル営業・マーケティング基盤をデジタル統合。
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タタ・スチール(インド):3つの異なる市場セグメント向けにデジタル・プラットフォームを展開し、B2C e-コマースで100億ドル以上の追加収益を達成。
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キリンホールディングス(日本):「KIRIN BuddyAI Project」として従業員向け生成AIツール「BuddyAI」を開発。マーケティング部門での先行導入で約39,000時間の削減効果を確認。
7. 経営・全社基盤部門
主なDXテーマ: ERP(企業資源計画)、BI(ビジネスインテリジェンス)、データ基盤、クラウド、経営ダッシュボード、全社標準化
課題と解決策: 部門をまたぐデータ基盤や業務基盤を整備し、経営判断、全社標準化、AI活用の土台を構築します。
事例:
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原田伸銅所(日本):国産ERPからSAP S/4HANA Cloudへ移行し、データ一元管理とリアルタイム経営情報の可視化を実現。
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BASF(ドイツ):SAP S/4HANA Cloud Private Editionへの戦略的移行を開始し、ハイブリッド戦略でAI・サステナビリティ機能を活用。
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三菱電機(日本):Amazon Web Services(AWS)との戦略的協業MOUを締結し、生成AI・クラウド技術統合、データ分析基盤強化、デジタル人材育成を推進。
分析から見えた3つの重要な示唆
今回の分析から、製造業DXを推進する上で特に重要な3つのポイントが明らかになりました。
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製造業DXは「製造現場」だけでなく、全部門に広がっている
IoTやロボットによる製造現場の自動化だけでなく、設計のPLM・CAE、品質のAI検査、保全の予兆保全、調達・SCMの需要予測、営業のCRM・生成AI、経営のERP・BI・データ基盤など、各部門で独自のDXテーマが進展しています。 -
部門別DXは、最終的にはデータでつながる
各部門で個別に最適化された設計データ、製造データ、品質データ、設備データ、調達・在庫データ、顧客データ、経営データは、それ単独では十分な価値を発揮しきれません。これらのデータを部門横断で活用し、統合されたデータ基盤を通じて連携させることで、製造業DXの真の効果が最大化されます。 -
部門ごとの課題を理解できるDX人材が重要になる
DX推進には、単にツールや技術の知識だけでは不十分です。各部門の業務課題を深く理解し、関係者を巻き込みながら、データと業務プロセスをつなぐ「橋渡し役」となるDX人材が不可欠です。このような人材が、部門間の連携を促進し、全社最適のDXを実現する鍵となります。
今後の展開と情報提供
ものづくり新聞では、これらの分析結果を基に、AI外観検査、品質データ分析、トレーサビリティ、予兆保全、スマートファクトリー、MES、PLM、生成AI活用など、製造業DXの主要テーマについて継続的に分析・発信をしていきます。
また、製造業向けDX教育事業「Innovation Maker Academy」やコンサルティング活動においても、実際の公開事例に基づき、企業ごとの課題に即した情報提供や学習コンテンツの拡充を進めています。
ものづくり新聞について
「ものづくりを通して好奇心と喜びでワクワクし続ける社会の実現」を目指し、国内外の製造業DX事例を継続的に収集・分析し、実務担当者に役立つ情報を提供しています。
ウェブサイトはこちらから⇨ https://makingthingsnews.com/
製造業向けDX人材育成プログラム「Innovation Maker Academy」
ものづくり新聞の知見を基に、デジタル活用やDX推進課題に対し専門講師による講義やワークショップを提供しています。ツール導入ありきではない、本質的なDX人材育成を支援します。
ホームページはこちらから⇨ https://imacademy.jp/
社員教育やDX人材に関するご相談は、下記までお気軽にお問い合わせください。
本件に関するお問い合わせ
ものづくり新聞 編集部(製造DX担当)
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株式会社パブリカHP:https://publica-inc.com/ja/
