株式会社TKC(本社:栃木県宇都宮市、代表取締役社長:飯塚真規)は、全国の中小企業約25万社の会計データを集計した「TKC月次指標(月次BAST)」の2026年10月公表分をもとに、中小企業の景況レポートを取りまとめました。2026年7月は、売上高が前年同月を上回った企業が53.2%と半数を超えました。一方で黒字企業は48.1%にとどまり、半数以上が赤字という結果です。売上の増加がコストの上昇に追いついていない実態が明らかになりました。
月次BASTは、全国の税理士・公認会計士が毎月の巡回監査で確認した中小企業約25万社の会計データをもとに、売上や利益の動きを業種別・地域別・売上規模別に毎月集計した統計です。アンケートで尋ねた景況感ではなく、実際の数字にもとづいている点が特徴です。

増収企業は前年同月から7.6ポイント上昇、黒字企業は2024年8月以降で最低水準
売上高が前年同月を上回った企業の割合は53.2%で、前月から1.0ポイント、前年同月から7.6ポイント上昇しました。前年同月の45.6%から大きく改善しています。地域差は最大2.7ポイント(北関東54.4%、山陰51.7%)と小さく、全13地域で半数以上の企業が増収となりました。
これに対し、全産業の黒字企業の割合は48.1%でした。推移を見ると、2024年11月の63.0%、2025年11月の61.8%を頂点に、2026年2月に53.4%、5月に52.4%、7月に48.1%と低下しており、2024年8月以降で最も低い水準です。季節的に低くなる2月の水準(2025年2月 54.0%、2026年2月 53.4%)も下回りました。
人件費(直接人件費)は前年比102.6%と2年続けて増加しています。売上の増加分が、仕入や人件費の上昇に吸収されている構図です。

業種別では建設業と小売業の約6割が赤字
2026年7月の業種別の黒字企業の割合は次のとおりです。建設業と小売業では約6割が赤字となっています。
- 生活関連サービス業・娯楽業:53.9%
- 製造業:51.0%
- 卸売業:50.5%
- 宿泊業・飲食サービス業:46.7%
- 小売業:43.2%
- 建設業:42.3%
建設業は、2024年8月以降の9時点すべてで全産業の水準を下回りました。2026年5月は42.2%で、前年同月(47.9%)から5.7ポイント低下しています。小売業は2026年5月の52.6%から7月に43.2%へと、2か月で9.4ポイント低下しました。売上規模別に見ると、2026年6月の黒字企業の割合は売上高0.5億円未満で41.6%、5億円以上10億円未満で52.2%と、10.6ポイントの差がありました。
価格転嫁しきれないコスト上昇が背景に
背景には、売上が伸びてもコストの上昇を価格に転嫁しきれない構造があります。建設業では、日本建設業連合会の資料によると、建設資材物価が2021年1月比で39%、技能労働者の賃金の目安となる公共工事設計労務単価が同27.8%上昇しました。その一方で、資材高騰を受けても契約金額の変更協議を申し出なかった元請・下請が37%にのぼります。
小売業では、総務省の家計調査で2026年7月の家計の消費支出(2人以上の世帯)が実質で前年同月比3.6%減と買い控えが続いています。そのなかで最低賃金は2025年度に66円、2026年度に56円引き上げられました。東京商工リサーチの調査では、「人件費高騰」を理由とする倒産が2026年上半期に前年同期の2.4倍に増えています。
専門家は「黒字・赤字の転換」を4区分で見る重要性を指摘
神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、黒字企業の割合について、多くの業種で上昇・低下の時期は共通しているものの、水準や変動の大きさは業種によって異なると解説しています。需要の変化、費用構造、価格転嫁のしやすさが業種ごとに違うためで、経済全体に共通する要因と業種固有の要因の双方から考える必要があるとしています。
さらに柴本教授は、同じ黒字企業割合でも、赤字から黒字へ転じる企業が増えている局面と、黒字から赤字へ転じる企業が増えている局面では意味が大きく異なると指摘します。「黒字継続」「赤字から黒字」「黒字から赤字」「赤字継続」の4区分を継続的に見ることで、中小企業の収益環境が改善と悪化のどちらに向かっているかをより明確に捉えられるとしています。
今回の調査対象は、TKCシステムで会計処理と税務申告を行う法人のうち、売上高500万円以上100億円以下の約26万社で、対象期間は2026年7月の会計データです。各月に全対象年月を再集計するため、同じ対象月でも次回以降の公開時に数値が変わる場合があります。調査結果の詳細は、月次BAST景況レポート(2026年10月号)で公開されています。
出典:TKC
